脱炭素の取り組み

「最初の一歩」のアドバイス

まちのエネルギー事情を
「見て」みませんか?

地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
産業技術環境研究本部
エネルギー・環境・地質研究所 資源エネルギー部
エネルギーシステムグループ 研究主幹

齋藤 茂樹博士(工学)

国交省系財団法人勤務を経て平成27年より道総研に入職。建築物の省エネ基準や道住宅施策に関する調査研究などに従事。令和5年より現職。

道総研 齋藤さん

地域や自治体の
エネルギーの動向を知ることから。

脱炭素について、道内の自治体間でも取り組み度合いの差があるようです。

道内各地では、バイオマス産業都市や地域循環共生圏などの取り組みが行われてきました。また、脱炭素選考地域に道内から6市町(※)が選定され、先進的な取り組みが進められているように、取り組み内容の違いは出てきているように思います。※2023年11月時点

ただ本冊子の発行主旨もそうだと思いますが、その差を埋めることに終始するのではなく、その自治体、その地域に合った脱炭素の取り組みを見定めてから、効率的に進めるべきだと思っています。
私が所属する道総研では、科学的な視点から、北海道の市町村の具体的な脱炭素化に向けた研究に取り組んでいます。

まず地域の特徴を知ることが大切ということですね。

おっしゃる通りです。例えば北海道は、「積雪寒冷」な地域なので、脱炭素の取り組みに関しても、「冬期間の熱エネルギーの需要」に着目する必要がでてきます。

道総研 齋藤さんのアドバイス

温暖な地域と北海道とでは、脱炭素の取り組み内容も異なる?

そうです。さらに北海道は広い大地にまちが点在するため、地域によって産業構造も異なります。例えば都市部なら「家庭の暖房エネルギーのニーズが高い」、工業地帯なら「工場群での電力消費割合が高い」、地方なら「物流の燃料などの割合が多い」など、エネルギーが使われる分野にも差が生じています。

加えて、洋上風力、陸上風力、太陽光など地域ごとに再生可能エネルギーのポテンシャルは多彩です。このため脱炭素対策を効果的に進めるためには、その地域や自治体のエネルギー需要をしっかりと把握することが重要と言われています。

データベースで分かる
まちの「エネルギーの素顔」。

まちのエネルギー需要を知る方法とは?

エネルギー事情を把握するためには、行政や研究機関が提供しているさまざまなツール(REPOS、RESAS、自治体排出カルテなど)を活用するのが近道です。

中でも私が薦めたいのは、東北大学中田教授の研究チームが開発した「地域エネルギー需給データベース」です。これは全国の市町村のエネルギーフローを見える化してくれるサイト。サイドバーの「地域を選ぶ」で市町村名を選択するだけで、現在の化石燃料由来のエネルギー量、再生可能エネルギーの導入で得られる最大のエネルギーのポテンシャルなども知ることができます。また「市区町村別エネルギー消費統計」を選択すると、まちの合計最終エネルギー消費量の内訳を知ることもできます。

地域の脱炭素化は、温室効果ガスの排出をいかに削減するかの取り組みですが、その大部分はエネルギー起源の二酸化炭素です。そのため、どのような産業、活動にどの程度のエネルギーが使われているかを把握することがとても重要と考えています。

地域エネルギー需給データベース
『地域エネルギー需給データベース』

東北大学中田俊彦研究室
地域エネルギー需給データベース(Version 2.6)

なるほど。エネルギー事情が「見える」わけですね。

はい。まちのエネルギー上の特徴が浮き彫りになるため、例えば省エネルギーにおいても「工場での電力消費の削減から」「家庭の節電キャンペーンに着手」「より効率的な物流の実現」など、取り組みの内容や優先性を検討する上でも役に立つわけです。

また全国の市町村データを参照できるため、エネルギー消費構造が近い自治体の取り組みを参考にしたり、近隣のまちの再生可能エネルギーを利用するなど、周辺の自治体との連携なども期待できます。
…という難しい話はさておき、まずはサイトを見ることから始めてみませんか。なかなか興味深いですよ。

まちとまちの連携で
脱炭素の壁を乗り越えましょう。

「見えた」まちのエネルギー事情を脱炭素に活かすためには?

脱炭素の取り組みは、「省エネルギー」から始めるのが効果的といわれています。なので、上記のデータベースなどを用いて自治体のエネルギーの消費状況を把握できたなら、次はどのジャンルの省エネルギーを優先して取り組むかを検討しましょう。
これらの「省エネルギー」対策を十分機能させた上で、再生可能エネルギーの導入により化石燃料由来のエネルギーを削減、さらに再生可能エネルギーの地産地消を進めることで、自治体の脱炭素化を目指すというのが理想的なシナリオです。

道総研 齋藤さんのアドバイス

エネルギー事情には地域差もあります。

はい。自治体単独での対策や施策には限界があるケースも多いでしょう。なので、私は市町村界の垣根を超え、地域の自治体同士が連携したり協働することが、脱炭素の壁を乗り越える大きな力になると思っています。もちろん市町村界を超えた連携は簡単なことではありませんが、様々な地域課題解決のためにも、脱炭素を契機として地域間連携の機運が高まることを期待しています。

道総研の協力を仰ぐことも可能ですか?

脱炭素に対する具体的な取り組みを進めるには、地域の実情を踏まえた、さらに細やかなエネルギー事情の把握が必要な場合があります。道総研では、さまざまな分野の研究を通して地域の脱炭素化の支援を行っています。この機会にぜひ一度、道総研の取り組みなどをホームページ等でご覧ください。

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地方独立行政法人 北海道立総合研究機構